:: 番外編 - 名もない子供

名もない男の "風"


名もない子供

その生まれた男の子の名は "イオ" … その名は父がつけたと言う。由来は聞かなかった。たぶん宇宙か神に関する何かだろう。イオは、生まれながら、夜になるといつも空を見上げていた。夜の空は静かな黒、どこまでも遠い、光が届かない空。その頃からもう、彼は "どこにも属さなかった" のかもしれない。

教会の中は、白い壁、冷たい石床。そこでは誰も怒鳴らない。しかし、誰も笑わない。両親は信仰に生きていたが、彼にはその意味がまったくわからなかった。


妹、リア

イオが 6歳のとき、妹が生まれた。彼女の名は "リア" … 失礼ですが ^ ^;; イオと違い、明るく元気で命そのもののような子だった。

「おにいちゃん、あのねっ !」
「おにいちゃん、また本読んで !」



イオは戸惑う。気づけばいつもリアの隣にいた。彼女の笑い声は、教会の静けさをかき乱すようだったが、イオの世界も柔らかく変えていた。


絶望の祈り

リアが 7歳になったある日、咳が止まらなくなった。微熱が続き、しだいに痩せていき、笑わなくなっていく。

母はとにかく祈った。父もとにかく祈った。

そんな両親を見ていたイオはひたすら走ってた。遠くのアリアハン王都の王立図書館に自分の足で何度も向かっていた。医学書、呪文書、古い魔導書など、毎日、食事も忘れて通って読み続けてた。
でも、妹は静かに言った。

「おにいちゃん、ありがと。また、読んでね…… !」

それが、最後だった。


信仰ではなく…

イオは、実家である教会をある日決心して出た。意志の通じない父とは無縁がちだったけど、母にこっそりと伝えて家を出た。

イオは "神が癒さないなら、自分が癒す" と決めた。

それからあれほど頑なに拒絶していた僧侶としての修行を始め、やっと回復魔法ホイミ… を習得した。
でも、その瞳はどこか空っぽだった。癒すために力を得たのに、癒せる誰かがいなかった。
そして彼は独り旅を続けた。人助けもした。けれど "誰かと共に旅する理由" を持つことにはならなかった。


あの日、ルイーダの酒場で

そんなある日も、彼はルイーダの酒場にいる。いつもと同じように、壁際の席に。誰とも喋らず、好きでもない苦手な酒を、ただ静かにちびちびと。

そこに現れた、ひとりの少女が。紺の服にグレーのマント。ショートカットの黒髪。まっすぐな目で、ぐいっと声をかけてきた。

彼は、その目を見て驚いた。笑い方が、あまりにもリアに似てた。でも、彼女はリアじゃない。"彼女" は "今を生きている" から。

イオは、少しだけ目を細めて、素直ではない素直な何かを言った。

こうして 4人 (5人 ?!) の旅が始まった ^ ^;


お し ま い !

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