:: 番外編 - 魔法使い
"拳" を捨てて想いを拾った日
きっかけの夜
旅の途中で、ダーマの神殿を目前にしたとある日の夜 22:30。
カトリーヌはひとり、焚き火の前で小さな氷のかけらを手のひらに浮かべてた。
「……むかしは少しだけ魔法ヒャドが使えたんじゃがの…」
それはまだ寒い、生まれ育ったムオルで遊んでいた少年の頃の覚えたての、弱い氷の魔法ヒャドだった。
「カトリーヌも魔法を使ってみたいと思ったこと、あるの ?」
「ふぉふぉ、ないこともないじゃが。わしはコレで語るほうが性格によく合っておってな…」
「けれど、あんた… 昔は魔法も少しって…」
「それは… 昔の話じゃよ、今はもう手からも心からも消えかけておるよ。」
その夜、彼は火の中に揺れるなにかの "幻" を見た。それは幼き日の自分だった。氷の魔法ヒャドを灯し、カトリーヌの妹のような姉エスティーニャに見せては笑い合っていた記憶だった。
「もういちど、あのころの自分に戻ってみたくなっただけじゃよ。」
魔法使い・カトリーヌ誕生 (笑)
ここはダーマの神殿。
転職の儀式を終えたカトリーヌは、魔力の増幅に必要な長い杖を左手に持っていた。その杖が目立つ姿を女僧侶に笑われてしまった…
「杖が、似合ってませんよ… ^ ^;」
「ふぉふぉふぉ… 自分でもそう思う…」
旅の仲間たちは少し戸惑いながらも弱くなってしまった ( ? ) カトリーヌを応援してくれた。
オルテガ「"ケン" (拳法) を封じてでも見せたいものとかがあるんだろう…」
女僧侶「わたし… 魔法使いのカトリーヌ、嫌いじゃない…」
しかし、数日経っても思うような威力の魔法も出ず、3人仲間のバランスも微妙に崩れていった。
とくに女僧侶の視線が痛かった。オルテガの沈黙も重かった。戦いの中で役に立てず、ただ風のように過ぎていくカトリーヌ。
ある戦闘で、彼は杖を持った魔法使いなのに、つい素手でモンスターを殴ってしまった。
オルテガ「…… やっぱり、カトリーヌはケン (拳法) の人だな」
カトリーヌはその言葉がなぜか涙が出るほど嬉しかった… ^ ^;
拳に戻る、己に戻る
数日後、カトリーヌはオルテガに懇願して、再びダーマへ行った。
「武闘家に戻すのじゃっ !」
神官たちは驚きもせず、ただ静かに苦笑しながらうなずいていた。
彼はもう、昔の魔法にも、理想にも、とにかく形にはこだわらなかった。ただ、自分の背に感じる仲間の信頼だけが、その答えだった。
「わしはケン (拳法) で守る。それで、いいんじゃよ。」
帰郷と命の芽吹き
"空旅" (ルーラ) の終わり。
村へ戻ると、娘が子を授かっていた。双子だった。
おじじ「そうか、あの子らが、わしのマゴか。」
おばば「ほら見なさい… あんたが道を迷った分、マゴたちの未来は真っ直ぐになるよ」
おじじ「ふぉふぉ、その通りかもな…」
彼は再び "ケン" を握る。守るべきものが、今ここにあるから。
でも、もう "魔法" は使わない。
だけども、その記憶は確かに自分の一部だ。いつかマゴたちが道に迷ったとき、そっと自分のことをマゴたちにでも語ってあげればいい。
「ケン (拳法) じゃのうて、"魔法" にも憧れてたわしの話をのぅ」
ふぉふぉ、これは昔話じゃーよ。
ある春の日、実家の庭の縁側で、カトリーヌは、スラりんと遊ぶマゴの横でぼんやり座っていた。風が心地よくて、遠い旅の記憶がふとよぎった。
「おじじぃー、もっと、スラりん、高く浮かせてー !」
「ふぉっふぉっ、スラりんも才じゃしのぅ。優しくな…っ !」
マゴが一息ついて、隣に座った。
「ねぇ、おじじぃ。… むかしほんとに魔法使いだったの ?」
「ふむ、すぐやめたがのぅ…」
「なんで… ?」
「若気の至りじゃーよ。ちょっと揺れたんじゃーよ、心がの…」
マゴはきょとんとする。
「なに、"わかげのいたり" ってなに ?」
カトリーヌは少しだけ笑って、少しだけ視線を遠くに向けた。
「旅の仲間に、女の僧侶がおってな…」
「ふぉふぉ ^ ^; わしもあのときは若かったんじゃーよ。あやつが魔法魔法って言ってきての。その気になってしまい、魔法使いになってみたら、妙にやさしくされてなぜか距離が近くなったりのぅ。」
「え… それって… ?」
マゴの顔が、ぱっと赤くなる。
「それって、まさか、好きになっったとか ?」
「ふぉっ、ふぉ…… ! ま、まぁ、ほれたまでとはいわんがの、心がふらついたかもの。」
「おじじ、それって、"浮気" じゃん !」
「こ、こっりゃっ ! まだおばばと結婚する前じゃっ !」
「おばばが知ったら……」
そのとき ^ ^; マゴが顔を覆う、おばばが縁側に現れた。
「何が "おばばが知ったら" だよ」
「…あ、え… べ、おじじが旅でちょっと女にモテてただけだよってはなし…」
おばばはクッションを手に取ったっ
「ふーん。"むかしばなし" … ねぇ…」
「ふがっっ」
「あんた、わたしの前ではずっと "武闘家" でいなさいよ…」
「ふぃ」
マゴが苦笑いながら、おじじを支えてた… ^ ^;
「ぴっ、ぴきぃっ ?!」
お し ま い !