:: 番外編 - 雪の声と炎の灯

お届け物でーっす ! 雪の町から。"A" より。


炎の魔法使い少女、リル (マゴ)

わたしは璃瑠 (読みは "リル")

お兄ちゃんと一緒に生まれた双子の妹。火の魔法を使う、元気いっぱい… とよく言われる純粋な魔法使い。
小さい頃は何でも兄カインと一緒だった。笑ったり怒られたり、木に登って落ちたり… ぜーんぶ、ふたりだった。

でもある日、おじいちゃんが旅に出ると言った。そしてわたしもついて行くと言った。カインは残った。

旅は楽しくて、ちょっと大変で、でもすっごくドキドキしてる。でも夜になると、思い出す… カインのことを。
静かで優しくてちょっとおせっかいで、ちゃんと見ててくれるお兄ちゃんだった。

そして、手紙を書いた。


氷の魔法使い少年、カイン (マゴの兄)

僕は海音 (読みは "カイン" … だけど本当は "カノン")
火のリルに対して、僕は氷の魔法を使う。
人前に出るのが苦手で言葉で伝えるのも下手。でも、誰かの痛みをそっと包むことなら、できるかもしれないと思ってる。

妹リルが旅に出て、家の中は静かになった。母もおばばも元気だけど、やっぱりどこかぽっかりしてる。

僕は手紙を書いた、リルに向けて。直接は渡せないけど、気持ちだけでも届けたかった。

「火を出すなよ。町ごと燃やす気か」「ただいま、リル」「おかえり、ばか」

それが、ほんとうの再会ならどんなにいいかと思いながら。


とある雪の町。

マゴを入れたアレルたちは、旅の途中ムオルという町で兄にそっくりな少年を見かけた。
顔は違う、でも目の奥の雰囲気が、仕草が、どうしても兄と重なってしまった。わたしはその夜、こっそり手紙を書いた。カインのこと、伝えたかったこと。

「会いたい」「だいすき」「ちょっと強くなったよ」

ポケットに入れて、誰にも渡せないまま寝た、と思った。


届ける魔法。

その手紙を拾った人がいた。旅の仲間でわたしの姉ちゃんみたいな人。
彼女は手紙を読まずにそっと微笑んだ。そして夜空に向かって呪文を唱えた。

「アリア…ハン………、アリアハン……、アリアハン… ル~ラっ !」

淡い黄色い色の光が彼女を包み、それはきらめいて、その姿は空へと飛んでいってその場からは消えた。
その夜のアリアハン。小さな家にひとつの手紙が届く。届け主などの名前は書いてなかったけど、その手紙のすみにこう書いてあった。

「お届け物です、雪の町から。差出人 "A" より。」


氷の返事

手紙を読んで、僕は泣きそうになった。でも、それ以上に嬉しかった。妹は元気で前を向いてた、僕の知らないところで。

そして、手紙を届けてくれた誰かに "ありがとう"


炎と氷の交わる場所

離れていてもこころはちゃんとつながっている。
火のような言葉も、氷のような想いも、手紙に乗せればちゃんと届く。
いつかきっと、本当の再会の日が来る。そのときの 2人はもう "あの頃の子ども" じゃない。

火の魔法と、氷の魔法。性質は違うけどどこか似てる。そんな双子である、兄と妹。


お し ま い !

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