:: オルテガの冒険
導かれし者
そして地下世界へ
世界樹の 4つの分枝を巡り終えた夜、オルテガは、眠りの中で深く沈むような感覚に落ちた。
それは夢ではなかった。
世界樹が語りかけていた。
「もうひとつの根に触れよ」
目覚めると、そこは空のない地下世界だった。
乾いた風。沈黙する黒土。けれど彼は、恐れずに歩き出した。
父と娘
空のない地下の世界。
けれど、この草原には、どこか懐かしい風が吹いていた。
オルテガは、静かに歩いていた。
ゾーマと "和解" した今、もう戦いも、使命も、過去も終わったはずだった。
けれど、どこか胸の奥に「まだ果たせていない何か」が、微かに残っていた。
その時だった。
遠くから、駆けてくる足音がした。
それは、軽く、元気で、でも泣き出しそうな速さだった。
彼は娘を抱きしめる腕に、力をこめた。強くて、あたたかくて、でも、どこか壊れそうなほど優しく。その後ろには、武闘家カトリーヌ、マゴのリル。無口な青年、そして、空に浮かぶ青い存在スラりん。みんなが静かに、見守っていた。
帰るべき場所
娘の笑顔を見て、エリナの静かなまなざしに触れて、オーレンの言葉少なな祝福にうなずいて…
彼は、ふたたび
"旅の装備" を手にした。
(最後に…… もうひとつ、やり残したことがあるんだ)
誰に告げるでもなく、彼は西の船着き場から小さな船に乗った。
そして向かったのは、あの村、ノアニール。
黒い霧は、まだそこにあった。
時を止めたままの木々。眠り続ける村人たち。
あの頃のままの、誰にも届かぬ想い。
オルテガは、静かに村の中央へと歩いた。
ポーチの中には、ゾーマの魔力が合わさってできた、"世界樹の雫"
があった。
あれは、戦いの証ではなく "世界がもう一度、命を思い出すための滴" だった。
祠の前。
オルテガは、雫を手のひらにすくい、空へ放った。
それは風に乗り、霧に触れ、やがて光となって村全体に降り注ぐ。
眠っていた人々が、ゆっくりと目を開けた !
かつての少女もまどろみから目覚めたように、立ち上がった。
けれど、誰も彼を "オルテガ" とは呼ばなかった。少女も、村人も、彼をただの旅人として見つめていた。
彼は、笑って言った。
「あの少年なら、大丈夫だよ。どこかでちゃんと、生きてる。心配するな…… 俺が、知ってる」
そのセリフを聞いた少女はきょとんとしながらも、微笑んだ。
まるで、何かを理解しているように。
帰り道、オルテガは一度も振り返らなかった。けれど風の中で、小さな鈴の音が一度だけ鳴った気がした。
「……
これで、やっと全部、終わった。」
彼は、旅人として歩き出す。
名を捨て、力を手放し、ただ人として、世界を感じるために。
お し ま い !