:: オルテガの冒険
コンビネーション
南東の沿岸部にて
ある日、王のもとにひとつの報告が届いた。
「南東の沿岸に、モンスターの巣が現れた。
船の航路が断たれ、村々が怯えている。」
「我が剣、オルテガよ。ゆけ。この王国に害をなすモンスターの者を、討ち払ってまいれ。」
オルテガは、うなずいた。だが、今度の戦は違った。
「そなたに同行者をつけよう。南方より (ゲームでは北へ行くとなぜか南に現れてしまう ^ ^;) 来た旅の者、カトリーヌという名の武闘家じゃ。」
相棒との出会い
港町の野営地。海鳴りが遠くで唸り、波打ち際に赤錆びた漁具が打ち捨てられていた。そこへ先に到着していたその人物は、全身を風と砂に晒したような、年季の入った男だった。
だが、顔を見た瞬間にわかった。
只者ではない。
オルテガが言う前に、その男。カトリーヌが口を開いた。
「おぬしが、王の剣か ? … 若いのう」
「私は "オルテガ" … そなたの名は ?」
「名乗るほどのものではないんだが、言うなら… "カトリーヌ" じゃ」
「…… 変わった名前だ」
「ふぉっふぉっ、よく言われるわい !」
笑っているようで、まるで隙のない構えだった。一度だけ小手試しに打ち合った。カトリーヌが咄嗟にオルテガの背を守る動きがあった。
その夜、ふたりは篝火のそばで黙って飯を食った。
剣を振るたび、隣で音もなく拳が走っていた。交わす言葉は少なかったけど、お互い背を任せられると思った。
ケン
(つるぎ = 剣) とケン (こぶし = 拳) を交え、すべてが通じていた。
翌朝、ふたりはモンスターの巣へと向かった。
海辺の戦い
現れた魔物は、海に棲む異形の怪物 "クラーゴン" ( ? ) 鋭い触手と甲殻を持つ巨大なイカのようなモンスターだった。
オルテガが右から斬りかかり、カトリーヌが低く飛び込んで触手を叩き落とした。互いに言葉は交わさない。ただ、動きが合った。
ふたりの戦いは、まるで長年の戦友のようだった。
やがてモンスターは倒れ、波は静かになった。
ふたりは無言で立ち尽くす。そして海を見つめ、そのとき、ふとオルテガが小さく笑った。それを見て、カトリーヌも少しだけ口元を緩めた。
「……
カトリーヌ、昔どこかで戦ったことがあるのか ?」
「あるかもしれんのう。忘れたくて、忘れたんじゃが」
カトリーヌはそう言って、海風に吹かれながら、ひとつ大きく息をついた。
そのとき、オルテガは初めて思った。
(この人となら、長い旅ができるかもしれない。)
カトリーヌがある夜、焚き火のそばで少しだけ語る。
「娘の寝顔が……
焚き火のゆらめきの中に浮かんで見えることがある。わしにもようやく 10を過ぎた娘がおってな…… まだ小さい。旅に出るとき、よう泣かれたわい。それでも……
誰かが、こうせにゃならんのじゃ」
「それでも出てきたのか… ?」
「おぬしも "出てくる"
しかなかったんじゃろ…」